●養蜂文章
大須賀さん作成をお願いします。→
この一滴が生まれるまで、11年 。
― ミツバチと過ごした、2025年の養蜂―

昨年の2025年は、
春先の冷え込みや、花のタイミングのずれもありました。
みかんの採蜜の時期には、
「間に合うのだろうか…」と、
ふと不安になることもあったんです。
その時のことを思い返しながら、
また新しい養蜂の季節が始まろうとしています。
一年でいちばん神経を使う、
みかんの花の時期も、もうすぐです。

みつばちのーとにとって、
「みかんの花」は特別な存在です。
脱サラして養蜂を始めようと決めたとき、
「みかんのハチミツが採れる土地で養蜂をしたい」
そう願って、伊豆にたどり着きました。
だからこそ、この時期は毎年、
少し落ち着かない気持ちで迎えています。

昨年の春は、冷え込みの影響もあり、
ミツバチの成長がゆっくりでした。
「今年は間に合うだろうか…」
そんな不安を抱えながら、
みかんの花の開花を見守る日々。
フジの開花が例年より遅れたかと思えば、
そのあとに咲く花が、予想より早く咲き始める。
採蜜のタイミングを見極めるのが、
本当に難しい春でした。

それでも迎えた、5月のみかん採蜜。
昨年の「みかんの雫」は、
キレのある爽快さというより、
やさしい甘みの中に、
ほんのりと柑橘の香りが広がる、
まろやかな味わいに仕上がりました。
正直、「あと5日早ければ…」
「もう少し遅ければ…」
そんな悔しさも残ったことを思い出します。
それでも、その判断もまた、
自然と向き合ってきた証だと感じています。
ハチミツは、
まさに“自然との共同作品”です。

6月は、「梅雨はあったのかな?」と思うほど、
晴れの日が続きました。
それでも期待と不安が入り混じるなかで迎えた、夏。
7月のある朝。
巣箱を開けると、
蜜がしっかり詰まった巣枠が並んでいました。
遠心分離機にかけた瞬間、
ふわっと花の香りが立ち上がり、
琥珀色のハチミツがとろりと流れ出てきます。
「無事に採れた」
そう思ったとき、
胸の奥の緊張が、すっとほどけました。

8月は本当に厳しい暑さでしたよね。
炎天下の中での作業は、想像以上に体にこたえます。
汗をダラダラと流し、息をつくのもやっとなほどの暑さ。
蜂場から見える海に、思わず飛び込みたくなるような日もありました。
それでも、目の前のミツバチたちは、
変わらず蜜を集め続けています。
8月の終わりには、
「清夏の薫り」の採蜜。
たっぷりと美味しい恵みをいただきました。

天候や花の咲き方、
ミツバチの状態。
どれひとつとして、
人の思い通りにはなりません。
それでも、
ミツバチが暮らしやすい環境を整えながら、
自然のリズムを感じ、
その年にしか生まれない味わいを、
ほんの少し分けてもらう。
養蜂とは、
そんな仕事なのだと感じています。

みかんのハチミツが採りたくて、
縁もゆかりもない伊豆半島・伊東市に移住し、
養蜂を始めて11年。
こうして一年を振り返ると、
この一滴のハチミツの中に、
たくさんの時間と出来事が詰まっていることに、
あらためて気づかされます。

今年もまた、
自然とミツバチに向き合いながら、
その瞬間にしか出会えない味わいを、
大切にお届けしていきたいと思います。
そして、こうして続けてこられたことに、
ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。
いつも楽しみに待ってくださる皆さまに、
心よりありがとうございます。
2026年3月
みつばちのーと 田中章雄
